俺の雫(しずく)No.3 12月15日 その2
2017/03/14

あの日仕込んだ醤油があんなことになるなんて、俺たちはまだ知らない
ナチュラル男子の「俺」が「しょうゆ」をつくるノンフィクション。
前回まで
冷凍された醤油麹(こうじ)を、常温で保存していた「俺」。
すでに4日も経過している。
醤油麹(こうじ)は刻一刻と衰退の一途をたどっていた。
早急に醤油を仕込むため、家路をいそぐ。
数多のミッションをクリアして無事に家へとたどり着くが……。
2015年12月15日
「ただいまー!」
ミッションクリアの安堵のせいか、極度の緊張が続いたせいか
すこしばかり声のトーンが、ジャパネットだったかもれない。
そんなハイトーンボイスの理由を含め、奥さんに状況を説明する。
寛大なる御心によって、息子の就寝延長が受理される。
ここまで来たら仕込みはもう安泰だ。
ついさっきまで泥船だったのがウソのように、大船乗りだ。
しかし、乗り移った船がタイタニック号とは知らずに
「俺」は安心感を垂れ流していた。
残すミッションは
- 息子と醤油を仕込む(神速に)
「俺」の心のゆとりを考えると、神的な速さを要する必要もない。
急ぐよりも落ち着いて、仕込みを楽しみたい。
「お醤油キット」は手元にある。
お塩(天日湖塩)もすでに量られて、小袋に分けてある。
案ずることは何もない!
あと、「俺」が用意すべきものは
水
これが悩ましいこと、この上ない。
だって、原材料が天然菌と自然栽培ですよ!!
あなただったらDO(ど~)します!?
- 地元で有名な天然湧水(わきみず)
- 無濾過・無殺菌の水。 新水いぶきとか
- お取り寄せした日本の百名水クラスの水
- こだわりの浄水器を通した水道水
- 近所のスーパーで買えるミネラルウォーター
- カルキ臭たっぷりの蛇口ヒネリたて水道水
ね~。
悩むでしょ~。
「俺」が選んだのは!!!
ドロロロロロロロロロロ~ ♪♪
ジャン!!!
5.近所のスーパーで買えるミネラルウォーター
がっかりしました?
やっぱり……。
「俺」なら
6.カルキ臭たっぷりの蛇口ヒネリたて水道水
いくべきでしたよね……。
みんなの期待が痛いほどわかっていたのに、選びきれなかった。
これに関しては言い訳をしたい。
この先「お醤油キット」が販売されたときの礎(いしずえ)になる。
それが「俺」。
もしも、「俺の雫(しずく)」に何か起きたとしても、
後に続く者たちが同じ轍(てつ)を踏まぬよう。
だから、1と6は選べない。
高すぎず、低すぎない理想。
誰でも再現可能なベターチョイス。
それが
5.近所のスーパーで買えるミネラルウォーター
というわけだ。
参考までに「○○のおいしい水」とだけ報告しておく。
ここで少しだけ「お醤油キット」の説明書を見てほしい。
ご自宅でご用意いただくもの
仕込み前
・容器(梅酒瓶のような4リットル程度のガラス瓶などで結構です)
・水1650ml(仕込み用)
・木べら 撹拌(かくはん)に使用します。
※仕込み用の水を煮沸する場合は、必ず冷却した後で使用してください。
聡いあなたはお気づきのはず。
「お醤油キット」の説明書を見ながら妄想にふけっていた。
そう、全開に妄想だけをしていたのだ。
正直、説明書は妄想するための起爆剤にすぎない。
だから説明書の内容など、ほとんど読んでいなかった。
そして見落とすのだ。
ご自宅でご用意いただくもの
・容器
ご自宅でご用意いただくもの
・容器
ご自宅でご用意いただくもの
・容器
・容器
・容器
・容器
・容器
ないわぁ~。
これを忘れるのは、さすがにないわぁ~。
仕込み前の醤油麹(こうじ)
息子の就寝時間まで30分ほどしかないこの状況。
とりあえず、我が家にある大きな容器を集めてみた。
- 5ℓ クラス代表:パスタ鍋
- 4ℓ クラス代表:土鍋
- 2ℓ クラス代表:ガラス瓶(パッキン付密封)
- 1ℓ クラス代表:麦茶とか入れるヤツ
これは……。
選択の余地もなく、3と4の二本仕込みで確定した。
さすがの「俺」でも1年間パスタ鍋で醤油をつくる気にはなれなかった。
たとえパスタ鍋が一年後に本業復帰したとしても、もうイタリアンな味は出せないほどにジャパンに染まるだろうしな。
だが、この急ごしらえの二本仕込みはイイ効果も生みだした。
「息子の雫(しずく)」 と 「俺の雫(しずく)」
息子に責任をもって、醤油を育てることを経験させる。
後付けにしては、上出来じゃないか。
なお、響きに下品さを覚えるのは、ご愛嬌の範囲としていただきたい。
さあ、小さなトラブルもなんのその。
お水を計量し、パッキン付の瓶と麦茶瓶に水を注ぎいれる。
塩は水にしっかりと溶かすのだが、意外とこれが大変、タイヘン。
混ぜるためのツールも即席だから、なお大変。
台所を漁りまくって、発見したのが……
コレだ!
勇者息子は「麺棒(めんぼう)」を手にいれた!
賢者「俺」は「菜箸(さいばし)」を手にいれた!
俺たちは手に入れたアイテムを駆使して、塩を溶かしていった。
その様相は、はたから見るととても勇者や賢者の行動ではない。
おおよそ、魔女が鍋で毒を煮詰めるに似たり。
出来上がった塩水を舐めるとその苦労が理解できる。
「俺」が息子より先に味を見る。
「ペロっと」
……(無言)。
「うまぃ」
「ほれ。舐めてみ」 (俺)
「うん」 (息子)
「うぇ~。 げほっ。ぺっ。ぺ~」 (息子)
ハニートラップならぬソルトトラップに、まんまとかかる息子に大爆笑。
しかし、この量でさえ塩を溶かすのが大変なのに、
先人たちは大変なご苦労をされたのだろうと、少しばかり思いをはせる。
さあ、残す作業は醤油麹(こうじ)を塩水に入れるのみ。
作業としてはとても簡単なので割愛する。
それよりもインパクトがあったのが
醤油麹(こうじ)の袋を開けた瞬間の香り……。
「かぐわしーーーーい!!!!!!」
表現するならば、
フルーティでありながらビターな芳ばしさを兼ねそなえた甘美なショコラ
そして見た目も美しい。
天然菌をまとった大豆の姿は、
抹茶をコーティングしたトリュフチョコレートに相似たり。
ゆえに、そっと人差し指と中指で抹茶を落とさぬようにつまみあげ、
おもむろに口へと放り込む……。
「むしゃ、むしゃ、むしゃ……」
妄想です。
いくら「俺」でも妄想です。
たとえ、チャンスが訪れても
「俺」が見た妄想のまねはしないでください。
左が「息子の雫(しずく)」 右が「俺の雫(しずく)」
存分に仕込みを楽しんだ「俺」たちは、次なる冒険を夢見て、床へとつくのであった。
しかし、冒険とは楽しいことばかりではない。
困難を乗り越えて成長することこそが、冒険ともいえる。
「俺」たちの向かう先には、なにが待ち構えているのだろうか……。
勇者の武器「めんぼう」が
いずれ大きなひずみを生むことを
俺たちはまだ知らない
「俺の雫(しずく)」を味見したい? そんなあなたにはこれだ!!!
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