〇〇農法? 〇〇栽培? 慣行・有機・自然? なにが違うのか?

農業とは:
地力を利用して有用な植物を栽培し、また、有用な動物を飼養する有機的生産業。
※広辞苑(第四版)より
農法とは:
私の広辞苑には……(第四版って古すぎっ)
なんと! のっていない!!
あなたの辞書には載っていますか??
最新の第七版には載っているのかもしれないですね。
毎度!! Webショップmai店長こと「俺」です。
今回のテーマは「農法」。
まずは、あなたの貴重な時間を無駄にしないためにダイジェスト。
1.農作の方法を、
2.複数の視点をもって、
3.偏りなく体系立てる。
※いきなり結果を見たい方は、こちらからジャンプ
この手の内容は他者批判になりがちで、どの情報も少なからず偏りを感じていました。
なにかの比較や違いを述べようとすると、意識してなくとも批判的に聞こえてしまいます。
暗に「農薬ってヤバイよねぇ~」とか「うちの〇〇農法の野菜は、体に良いものだよ!!」的な……。
混沌とした現代の農業を、可能な限りフラットな状態で体系立てた時、今まで見えなかったことが見えるのではないか?
そんな心もちは……。一切ございません!!
一番の目的は、脳内の整理整頓と棚卸です。
もちろん自分の為ではありますが、農業・環境・食に関心がある方には参考になると思います。
そして先にお伝えしますが、農法(栽培方法)は、星の数ほどあります。
同じ方法論でも、異なる捉え方をする場面も多々あります。
例えば土壌に稲わらを施す場合。
- 肥料分として
- 微生物の生息環境のため
- 水はけ水もちの良い土壌のため
考え方(真実)は多様です。ですが事実は「土壌に稲わらを施す」、これだけなのです。
ですので、スパっと竹を割ったような内容では無く、食パンをノコギリで切ったような内容になりますので覚悟してください。もちろん可能な限り、分かり易い判断軸をもって体系立ててみます。
では本題に入りましょう。
まずは、
農作方法の一覧(あいうえお順)
- 合鴨農法
- 慣行栽培
- 自然栽培
- 自然農法
- 自然農
- 循環農法
- 炭素循環農法
- 永田農法(緑健農法)
- バイオダイナミック農法
- ハイポニカ農法
- ピンク農法
- 不耕起栽培
- 無農薬栽培
- 無肥料無農薬栽培
- 有機栽培
- 養液栽培
上記は「農法」をネットで検索すると、比較的上位に表示されるものです。農業に興味がなくとも2つ3つは耳にしたことがあるのではないでしょうか?
全ての農法を網羅しているわけではありませんが、家庭菜園レベルから商業ベースまで、2017年の段階では概ねこのような農法が検索上位におります。
今回は、上記の一覧を元に考察します。
1.地力を利用しているか、否か?
最初の分類として農法が「土を介しているか否か」を、考えてみます。
イメージしやすいのは、植物工場などで行われる水耕栽培です。
今回の分類ではキノコや水ワサビのように、【そもそも土を介さない植物】は除外して考えます。
- ハイポニカ農法
- 養液栽培
上記は、土を用いない農法です。養液または、土以外の培地を使用した農法です。
2.田畑に対する施策
次の分類は、植物や田畑に対して人が行う行為です。
イメージとしては土や植物、圃場に対して人が行う全般。
耕起(耕すこと)、除草、施肥、農薬、資材など人為的に行われ、持ち込まれるモノ
2-1.耕起するか、否か
農業において土を耕すことは既知の概念ですが、以下の農法は土を耕しません。
- 自然農法
- 自然農
- 不耕起栽培
ココであげている不耕起栽培は、自然農法の不耕起とは異なります。
諸外国の大型農場で行われている、不耕起栽培をさしています。
2-2.除草
除草に対する方法論も多様です。
除草剤、マルチなどの資材防草、物理的な除草、無除草など。
ココは少し重なり合う部分があるので、図解しておきます。
「除草」に関しては、包括的なイメージで分類しています。
『除草剤を使うなら、草刈りは必要ないでしょ?』と、疑問に思われるかもしれませんが、あくまで人為的に行われる土に対する施策を段階的に分類しています。
【何もしない】 ⇒ 【草を刈る】 ⇒ 【草が生えにくくする】 ⇒ 【草を生えないようにする】
分類の判断基準は各農法にて「〇〇しない。〇〇は使用しない」等の、禁則事項と基本概念をベースにしています。
つまり禁則事項に含まれないモノは、容認しているという判断で分類しています。
2-2-ⅰ.除草する
除草剤
- 慣行栽培
- 永田農法
- ピンク農法
- 不耕起栽培
資材防草
- 合鴨農法
- 自然栽培
- 無農薬栽培
- 無肥料無農薬栽培
- 有機栽培
2-2-ⅱ.除草しない
- 自然農法
- 自然農
- 循環農法
- 炭素循環農法
- バイオダイナミック農法
2-3.外部から土に持ち込まれるモノ
Aという物質を肥料として入れるのか? または土壌改善の目的で入れるのか?
この様な認識のズレを緩和するためと誤解を生まないために、ココでは肥料と言う概念ではなく持ち込まれる物質として分類します。
つまり持ち込む物質が土にもたらす効果や、望まれる目的は考慮しません。
【重要】持ち込まれるモノは、その地とは異なる外部から持ち込まれたモノとして判断します。(種子などは除く)
例:畑から生まれた人参の葉が、同じ畑の土に還る行為は除外します。
例:畑から生まれた人参の葉を、別の畑の土へ人為的に持ち込まれることはカウントします。
持ち込まれるモノの分類としては、
2-3-ⅰ.化学的に精製、配合された無機物
窒素・リン酸・カリを配合した物
- 慣行栽培
- 永田農法
- ピンク農法
- 不耕起栽培
- 無農薬栽培
2-3-ⅱ.天然鉱物などの化学処理されていない無機物
草木灰、炭酸カルシウム、天然りん鉱石、岩石を粉砕した物など
- 合鴨農法
- 慣行栽培
- 永田農法
- バイオダイナミック農法
- ピンク農法
- 不耕起栽培
- 無農薬栽培
- 有機栽培
2-3-ⅲ.有機物(動物系)
動物の排泄物、食肉など加工時に出るクズや骨粉、貝殻など動物由来の物質を醗酵・乾燥・粉砕された物など
- 合鴨農法
- 慣行栽培
- 永田農法
- バイオダイナミック農法
- ピンク栽培
- 無農薬栽培
- 有機栽培
2-3-ⅳ.有機物(微生物系)
菌や酵母などをはじめとする微生物群
- 合鴨農法
- 慣行栽培
- 永田農法
- ピンク栽培
- 無農薬栽培
- 有機栽培
2-3-ⅴ.有機物(植物系)
草や植物残渣、ヌカや油粕の様な加工クズ、海藻などを発酵・乾燥・粉砕された物など。
- 合鴨農法
- 慣行栽培
- 循環農法
- 炭素循環農法
- 永田農法
- バイオダイナミック農法
- ピンク栽培
- 無農薬栽培
- 有機栽培
2-3-ⅵ.何も持ち込まない
- 自然栽培
- 自然農法
- 自然農
- 無肥料無農薬栽培
2-4.植物(生育中)および、田畑へ人為的に施される無機および有機物
『農薬』という言葉は受け手によってイメージ(マイナス)があるので、再定義した上で使用します。
農薬:
農業の効率化や農作物の保存に、効果が期待される物質の総称として定義します。
2-4-ⅰ.人為的に化学合成された有機化合物
一般的に【登録農薬】と呼ばれる。所定の毒性試験結果などを提出して、農林水産大臣の登録を受けた農薬。安全使用基準に従って使用される。
http://www.acis.famic.go.jp/toroku/index.htm
- 慣行栽培
- 永田農法(緑健農法)
- ピンク農法
- 不耕起栽培
2-4-ⅱ.天然物や無機化合物
【特定農薬】農薬登録の必要ないほど安全性が明らかな農薬として、農林水産大臣が指定した5種。(2016年時点)
- 重曹
- 食酢
- 地場の天敵(昆虫綱及びクモ綱に属する動物であり、人畜に有害な毒素を産生するものを除く。使用場所と同一都道府県で採取されたものに限る。特定の離島においては離島内で採取されたものに限る)
- エチレン
- 次亜塩素酸水(塩酸又は塩化カリウム水溶液を電気分解して得られたものに限る)
http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tokutei/
【特定農薬】(指定保留中)特定農薬の検討資材リストにあるが、農薬としての効能が明らかでないもの。
農薬効果を謳って販売することは禁止されるが、使用者が自分の判断と責任で使用することは可能。
例)コーヒー、緑茶、牛乳、焼酎、木酢液など
- 合鴨農法
- 無農薬栽培
- 有機栽培
2-4-ⅲ.何もしない
- 自然栽培
- 自然農法
- 自然農
- 循環農法
- 炭素循環農法
- バイオダイナミック農法
- 無肥料無農薬栽培
3.各農法の特徴
合鴨農法:
- お米の栽培で用いられ合鴨除草法とも呼ばれる
- 合鴨を放飼することで雑草や害虫を餌として食し、排泄物が稲の養分となる
- 肥料や農薬を十分に使用できず農機の導入も困難な環境、特に発展途上国から注目されている
- 合鴨の逃亡および外敵の侵入を防ぐために、糸や柵で囲む必要がある
- 合鴨の飼育には手間を要する
慣行栽培:
- 日本で一番普及している栽培方法
- 各都道府県が公表している【慣行レベル】を元にしている
- 一般的に化学合成農薬・化学合成肥料が使用される
- 安定した収量が見込まれる
※慣行レベルとは
特定の農産物が生産された地域で慣行的に行われている栽培において、使用されている農薬及び化学肥料の使用状況を、地方公共団体が策定又は確認したもの。
自然栽培:
- 農薬・肥料を一切使用しない
- 水はけ水もちの良い土づくりに主眼をおいている
- 肥毒と呼ばれる土中の毒素を抜くこと
※肥毒:土を深く掘ると、周囲よりも温度が低い層が存在する。それを肥毒層と呼ぶ。
※指導者・団体によって若干の違いがある。
自然農法:
- 不耕起(耕さない)、無肥料、無農薬、無除草
※実践者によって若干の違いがあるが、共通項は不耕起と無除草。
自然農:
- 不耕起(耕さない)、無肥料、無農薬
※自然農法と名称が似ているが、違いは人力による除草を肯定していること
循環農法:
- 草を畑から持ち出さない(土に還す)
- 虫は殺さない(無農薬)
- 循環の主役は菌
- 畑の草を見て必要とされる堆肥を判断する
- 旬と輪作を守る
※ここでの旬とは、作物の特性に合った時期の栽培のことを指しています。
※輪作とは、同じ土地に別の性質の農作物を何年かに1回のサイクルで作っていく方法(同じものを作り続けない)。
炭素循環農法:
- 無肥料・無農薬
- 循環させるものは炭素
- 植物へではなく土壌微生物への餌として有機物を与える
- 有機物は窒素に対する「炭素の比率が高い物」を与える(廃菌床、廃材チップ、落葉等)
- 菌床(炭素資材)は1反当たり年1トンを目安
永田農法(緑健農法):
- 必要最小限の水と肥料で作物を育てる
- トマトや玉ネギの栽培が有名
- 基本はビニールハウス内でマルチシートを張って、乾燥気味な環境で栽培する
- 作物を飢餓状態に追い込むことによって植物の力を最大限に引き出す
バイオダイナミック農法:
- 有機栽培の一種で、農薬と化学肥料を使わない
- 天体の動きとの調和、動物との共生、独自の調合剤が特徴
- 調合剤の利用は、あくまで「力」の伝播であって「物質」の投入ではない
- 伝統品種の育種、種子生産、流通において同農法が大きな役割を担っている
ハイポニカ農法:
- 土を使わない
- 種から育てる(苗からではない)
- 養液に流速を与え循環させる
- 循環させる過程で、空気(酸素)を混入させる
- 作物や成長時期に関わらず同一組成・同一濃度の肥料を投与
※1985年のつくば科学万博では【巨木トマト】として有名になっています。http://www.kyowajpn.co.jp/hyponica/documents/pressrelease_20150519.pdf
ピンク農法:
- 正式名称は「光変換ピンク農法」
- 赤色のフィルムやネットを使って、光合成に必要とされる長波長域の光エネルギーに変換・増幅し、植物の育成を促進する
- 成長促進による、早期収穫と収穫量の増加
- 基本的には慣行栽培がベースだが、有機栽培など他の農法がベースの場合もある
※農業の技術論と言うよりは、農業資材にフォーカスされている
不耕起栽培:
- 不耕起または、保全耕転(土壌表面のうち30%ほどを植物の残渣で覆う)
- アメリカでは主流になりつつある
- 不耕起栽培に適した改良種子が使用されることがある
※残渣(ざんさ):残りかす。濾過したなどした際に残った不溶物
※例:米作りでは米が収穫物で、稲わらなどが残渣にあたる。
無農薬栽培:
- 登録農薬を使わずに作物を栽培
- 環境・品種・適期・適地・適作などを考慮して栽培
- 適正な施肥計画を実施(過剰な肥料は病害虫への抵抗力を弱めるという考えの元)
※特別栽培農産物の表示ガイドラインにおいて「無農薬」等の表示は禁止されています。
※表示違反よる直接の罰則はありませんが実態とかけ離れていると判断された場合、JAS法違反に問われる可能性があります。
無肥料無農薬栽培:
- 農薬・肥料を一切使用しない
- 土そのものを生かすことを主眼とする
有機栽培:
- 有機JAS規格で認められた農薬以外は使わない
- 有機肥料の他に化学合成されていない無機肥料が認められている
※有機JAS認定を取得していない農産物は、「有機」「オーガニック」等の表記は出来ません
養液栽培:
- 植物に必要な養水分を液肥として与える
- 土を培地に用いない、石綿(人造鉱物繊維)を培地として用いるロックウール耕などがある
- 培地自体を用いないものは、水耕栽培・噴霧耕などがある
まとめ
ココまでの分類を分布図にしてみますので、分かり易く略号を振っておきます。
合鴨:合鴨農法 慣行:慣行栽培 自栽:自然栽培 自農:自然農法 自然:自然農 循環:循環農法 炭循:炭素循環農法 永田:永田農法(緑健農法) バイオ:バイオダイナミック農法 ハイポ:ハイポニカ農法 ピンク:ピンク農法 不耕:不耕起栽培 無農薬:無農薬栽培 無肥料:無肥料無農薬栽培 有機:有機栽培 養液:養液栽培
※不耕起栽培とは自然農法の不耕起とは異なります。
農法と土の関係
農法と草の関係
土へ持ちこまれるモノ
植物などへ施されるモノ
収量のイメージ(店長の独断と偏見)
市場価格のイメージ(店長の独断と偏見)
終わりに
昨今は、2020年の東京オリンピックに向けて持続可能というテーマの元に、日本社会は少しづつ変化を遂げています。見えにくい変化かもしれませんが、それは確実に、着実に変わっています。
私たちナチュラル・ハーモニーは20数年前より「自然栽培」の八百屋として生業を続けてきましたが、今ほど「自然栽培」という言葉が認知されている時代を知りません。そしてこれからはもっと当たり前な選択肢のひとつとして、社会に受け入れられていくことを願ってやみません。
すべての農法にメリットとデメリットがあります。商いとして成り立ちにくい農法。収量の多い農法。環境負荷の少ない農法。価格が高すぎる農法。一長一短です。だからこそ私たちは、未来を見据えた消費を選択しなくてはいけないと思います。
私たちが今食べているもので、私たちの身体が作られています。そして、私たちが応援する農業が数年後の日本の農業の未来を造ります。
農業人口が減る現代において、『あなた』の貴重な選択の参考となれば幸いです。
おしまい。
記事をかいた人
Webショップmai店長こと「俺」
この記事を最後まで読んじゃった、あなた!!
↓↓いいね・シェアはお気軽に↓↓